高まる期待とタイトなクレジットスプレッド

2029-12-31
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米国のクレジット市場に投資している人や注目している人であれば、恐らく誰もが「クレジットスプレッドは極めてタイトだ」というフレーズをこの一年で何度も耳にしたことでしょう。これは何を意味するのでしょうか。

クレジットスプレッドがタイトな場合、企業への債券投資と米国政府への債券投資(米国債などへの投資)で得られるリターンの水準を評価し、それが自らの経済や企業のファンダメンタルズに関する見通しとどの程度適合するかを検討することが重要です。図表1は、米国の投資適格債の代替指標であるブルームバーグ米国社債インデックスのオプション調整後スプレッド(OAS)を、同インデックスの最低利回り(発行体がデフォルトに陥ることなく支払うことができる債券の最低潜在利回り)に対するパーセンテージで示したものです。これは、投資家が米国債と比較して米国の投資適格債セクターへの配分を選択することによって受け取る相対的なリターンを示しています。チャート上での線が高ければ高いほど、追加リスクに対して投資家が得るリターンが大きくなります。

図表1
米国投資適格債のOASの最低利回りに対するパーセンテージ

米国投資適格債のOASの最低利回りに対するパーセンテージ

現在、米国債と比較して投資適格企業への投資で得られる追加のリターンは、2007年の世界金融危機前以来見られなかった水準にあります。

過去3年間、私たちは米国債のボラティリティが米国投資適格社債市場のクレジットスプレッドのボラティリティを上回るだろうと予測してきました。そして、その状況が現実に起こっています。しかし、3年前と現在の環境には重要な違いがあります。例えば、2022年には米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために金利を引き上げていたため、リセッションへの懸念が高まり、クレジットスプレッドが当初から大幅に拡大していました。当時、社債の追加スプレッドは、米国債のボラティリティに対する補償として機能していました。米国債の基準金利が上昇しても、クレジットスプレッドの縮小によってその影響が吸収されていたのです。しかし、今日の環境では、OASの利回りに対する割合が2000年以前の水準に達しない限り、クレジットスプレッドが広範囲で縮小する余地はほとんどないと考えます。

このような局面で、社債に投資することで得られる追加のプレミアムがないことを考えると、ベンチマークを再現し、アウトパフォームすることが求められる債券運用マネージャーにとって、市場を効果的に乗り切るのは難しいでしょう。現在の局面でクレジットリスクを軽減するためには、国債とクレジットの配分を柔軟に変更することが不可欠と考えます。そのため、私たちは、ベンチマークにとらわれずに配分をより自由に調整できる債券運用マネージャーの方が、現在の市場を上手く立ち回れると確信しています。

Connor Fitzgerald

コナー・フィッツジェラルド

債券ポートフォリオ・マネジャー