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ナネット・アブホフ・ジェイコブソン
- グローバル・インベストメント兼マルチアセット・ストラテジスト
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※下記コメントは2025年3月末時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
避けられないものとして死と税金がありますが、そこに「不確実性」も加えるべきかもしれません。2025年を迎えるにあたり、政策の不確実性はある程度予想されていましたが、わずか1四半期が経過したところで、2025年に関する幾つかの仮定が覆されています。
まず、(1)米国例外主義はもはや当たり前ではありません。(2)トランプ政権は関税を単なる交渉手段以上に利用しており、予想を超える水準に達していますが、問題は依然として未解決です(図表1)。(3)FRBは、ソフト・ランディングに向けて利下げサイクルを進めることができず、経済成長の鈍化とインフレの上昇により、政策の選択肢が限られています。(4)株式市場の下落は、極端な政策決定を抑制する役割を果たさないことが判明しました。
図表1
激動の時代
米国の貿易政策を巡る不確実性
出所:Refinitivのデータに基づき、ウエリントン・マネージメント作成。データ期間:1985年1月15日~2025年2月15日。米国貿易政策不確実性指数を使用。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。上記はあくまで例示目的で示しています。
現在の状況にもかかわらず、私たちはわずかにリスク選好姿勢を取っています。基本シナリオとして、米国は景気後退を回避すると予想しています。グローバル株式とクレジットに対して小幅オーバーウエイトの見通しを持ち、バリュエーションの低下を捉えてリスクを追加する方針です。クレジットに対しては、ハイイールド債のスプレッドが約80bps拡大した時点で中立から小幅オーバーウエイトの見通しに引き上げました。クレジットは近年底堅く推移しており、魅力的な利回り、信頼できるリターン、強固な需給のテクニカル要因が見られています。
2025年初めに予想していた通り、市場をけん引する要因が多様化しており、地域や投資アプローチにおいて劇的な変化が見られます。米国の超大型テクノロジー株がその優位性を失う中、米国ではグロース株がバリュー株に対して年初来で約10%アンダーパフォームしており、他の地域でも同様の傾向が見られています。一方、米国以外の株式は、各国の財政政策の影響でアウトパフォームしています。特に、ドイツが軍事やインフラに1兆ユーロ規模を投資する計画が、防衛、金融、資本財を始めとする欧州株式の上昇に寄与しました。中国株式も政府の景気刺激策に加え、競争力のあるテクノロジー・セクターの恩恵を受けています。
市場をけん引する要因が多様化し続けると考えており、地域に対する中立の見通しは、地域間でのバランスの取れたポジションを取るべきという見方を反映しています。また、欧州と日本では利益成長や上方修正が見られ、米国株式と米国以外の株式との間のバリュエーションの差が縮まると考えています。米国債利回りは、経済成長の鈍化とインフレの上昇の影響で一定のレンジ内で推移すると予想され、この動きは欧州と英国にも影響を及ぼす可能性があります。
わずかなリスク選好姿勢の維持を検討 — 米国の政策の不確実性が高いものの、基本シナリオとして米国が景気後退に陥るとは予想していません。そのため、投資家はグローバル株式とクレジットの双方へのリスク配分をまだ検討するべきでしょう。グローバル株式では、金融や情報技術に加え、インフラ投資や防衛費などファンダメンタルズ面の追い風を踏まえ、公益事業と資本財・サービスを選好しています。 エネルギー、生活必需品、電気通信サービスに対してはネガティブの見通しです。
市場のけん引役拡大の可能性を踏まえたポジション — トランプ大統領の米国中心政策により財政支出が増加する中、利益成長が米国以外にも広がると予想しています。特に先進国においてこのテーマは継続すると考えています。そのため、投資家は米国を除く先進国に対して少なくとも中立のエクスポージャーを検討するべきでしょう。
利回りはレンジ内で推移すると予想 — 経済成長とインフレの影響で、利回りは一定のレンジ内で変動すると見込まれます。そのため、FRBは政策金利を据え置きとし、米10年債利回りはレンジ内で推移すると予想しています。投資家はアクティブ運用を活用することで、超過収益獲得を目指し、利回りが極端な水準に達した時に生じる投資機会を捉えることができるでしょう。
スプレッド・エクスポージャーを追加する機会を検討 — 「景気後退は回避される」という基本シナリオを踏まえ、リスクを追加する機会として株式市場の調整局面でのハイイールド債のスプレッド拡大に注目しました。ハイイールド債発行体のローンやプライベート・クレジットなど他の資金調達手段は、ハイイールド債市場の供給、流動性、格付けを構造的に改善しています。
ナネット・アブホフ・ジェイコブソン
スプリヤ・メノン