レイトステージ・グロース投資:市場の変化を読む

2029-12-31
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Matt Witheiler

レイトステージのプライベート市場における投資活動の動向

2025年のレイトステージのプライベート市場における投資は、過去数年間と比較して堅調に推移すると予想されます。その理由を理解するには、まず歴史的な背景を押さえることが重要です。

2020年から2021年にかけて、レイトステージのプライベート市場は過剰な熱狂によって過剰な資金調達が行われました。その後の2、3年間は、この状況を是正する期間となり、市場の調整が進みました。そして2024年に入り、特に同年後半から企業が再び積極的に資金調達を開始し、その流れは現在も続いています。では、なぜ今、投資が加速しているのでしょうか?その背景には、3つの理由があると考えられます。

2025年のレイトステージのプライベート市場における投資活動が加速すると考えられる理由:

  1. 企業の資金ニーズの高まり:多くのレイトステージ企業は、前回の資金調達を2020年から2021年の市場熱狂期に実施しました。それから3~4年が経過しており、現在では手元資金が大幅に減少している可能性があります。事業拡大のためには新たな資金調達が必要となり、その動きが市場の活性化につながっています。
  2. 企業の成長とバリュエーションの安定化:2020年から2021年の間に前回の資金調達を行った企業の多くは、この数年間で収益基盤を拡大しました。マルチプル(評価倍率)が低下しているにも関わらず、バリュエーションは前回の調達時と同等か、それ以上に成長しているため、大規模なダウンラウンド(評価額の引き下げ)のリスクが低くなっています。この結果、企業にとって資金調達がしやすい環境が整っています。
  3. 公開市場のマルチプルの安定化:レイトステージの非上場企業にとって、公開市場の動向は重要です。なぜなら、多くの企業がIPO(株式公開)を次のステップとして見据えているからです。もし公開市場のマルチプルが急落すると、IPOによる資金調達に対する懸念が高まります。これは、株式公開後に企業価値の評価が下がる可能性を意味するためです。しかし、2024年を通じて、公開市場ではテクノロジーおよびグロースセクターのマルチプルが安定しました。その結果、非上場企業は、マルチプルが下落し続ける市場環境でIPOを行うリスクを避けることができると考えています。

このように、より安定したバリュエーション環境のもと、レイトステージの非上場企業は2025年も引き続き積極的に資本調達を進める可能性が高いでしょう。

レイトステージのプライベート市場におけるバリュエーションの動向

レイトステージの非上場企業が資金調達を行う際、公開市場のバリュエーションが重要な指標となります。過去の市場動向を振り返ると、2020年から2021年はバブル期にあたり、一部の企業では将来収益に対するマルチプルが100倍を超えることもありました。しかし、その後の2022年から2023年は市場の調整期となり、バリュエーションは大幅に下落しました。

2023年後半から2024年にかけては、市場のバリュエーションはより安定した水準に落ち着いています。この傾向は2025年も続くと予想されます。ただし、2020年から2021年のようなバブルの再来は見込まれず、次に類似の市場熱狂が発生するとしても、20~30年はかかるでしょう。現在の公開市場はより正常なバリュエーション環境にあり、その影響を受けてレイトステージの非上場企業は、2022年から2023年の水準よりも高いバリュエーションで資金調達を行う可能性が高くなっています。このバリュエーション水準は、過去20~30年間の業界動向と照らし合わせても妥当な範囲と言えるでしょう。

レイトステージ企業のエグジット環境

レイトステージの非上場企業が資金調達後の「出口戦略」として選択するのは、IPOとM&Aの2つの方法です。2025年は、レイトステージのプライベート市場にとって、IPOがより活発化する可能性が高い年になると予想されます。その根拠として、以下の2つのデータが挙げられます。

  1. IPO市場の周期性:過去5年や10年ではなく、過去50年間のデータを分析すると、IPO市場は1~3年間にわたり低迷し、その間のIPO発行額は平均値を大きく下回る傾向があります。しかし、その後市場が回復し、IPOの件数が急増するケースが多く見られます。2025年は、この低迷期の3年目に当たり、過去の傾向と照らし合わせると、市場が回復に向かう可能性が高いと考えられます。
  2. 選挙年とIPOの関係:アーンスト・アンド・ヤングのデータによると、大統領選挙などの選挙の年と比較すると、その翌年にIPOの発行額が平均39%増加する傾向があることが確認されています。さらに、選挙翌年のIPO活動は、通常の年と比べて24%高い水準となる傾向があります。このデータからも、2025年のIPO環境は堅調に推移すると予測されます。

一方、M&Aに関しては、2025年は低調になる可能性が高いと考えられます。この見解は一般的な予測とは若干異なるかもしれません。その理由は以下の2点です。

  1. 規制の厳格化:新政権のもと、大型のM&A取引に対する審査がより厳しくなる可能性があります。レイトステージのプライベート市場には、大企業や急成長中の非上場企業が多数含まれます。特に、2つの大規模な非上場企業やテクノロジー企業の合併に対して、新政権は慎重な姿勢をとると予想されます。
  2. 負債コストの上昇:2025年の市場環境では、負債コストが歴史的に高い水準に達する可能性があります。インフレの影響や金利の高止まりが続くことで、企業の借入コストが増加し、レバレッジを活用した戦略(非公開化やレバレッジド・バイアウトなど)の実行が難しくなります。また、規制の影響によって取引コストがさらに上昇する可能性もあり、M&Aの実行が抑制される要因となります。

このような要因を基に、2025年はIPO市場が活発化する一方で、M&A市場は低調になる可能性が高いと考えられます。

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マット・ウィザイラー

レイトステージ・グロース・ヘッド